アイルランドゆる留学紀

アイルランドの街ではじまった学生生活を書き留めます。

ゴールウェイ国際芸術祭でボランティアした話


さて、すっかり夏の様相であるアイルランドでは、多くのイベントが開催されます。音楽祭、コメディフェス、芸術祭などなど…。その中でも最大規模のお祭り、Galway International Arts Festival(GIAF)でボランティアをしてきました。その記録をまとめたいと思います。

Galway International Arts Festivalとは

GIAFは1978年から40年以上続いているゴールウェイを舞台にした芸術祭です。年々規模が拡大し、国内外から多くの観光客を呼び寄せる催しとなっています。今年はコロナ禍明け初の本格的な開催でした。4000人以上を収容する屋外コンサートや、演劇など屋内の出し物も戻ってきて、Back to normalを感じます。

ゴールウェイの街を上げて行われるお祭りで、2週間続きました。
www.giaf.ie

よければウェブサイトから写真などご覧になってください。

ボランティアとして働くには

GIAFは完全に有志からなる委員会とボランティアの協力によって開催されます(開催委員会はとても少人数)。ボランティアをやってみたいと思う人は、毎年更新されるGIAFのウェブサイトのJoin&Supportというセクションから、ボランティアとして登録するフォームに記入するだけです。登録後にオリエンテーションや、シフトの申し込みの案内がメールで届きます。

勉強・仕事との両立は可能?

もちろんです。基本的に仕事は4時間〜6時間(コンサートなどは長丁場)で、好きな曜日・時間帯のシフトを選んで働くことが可能です。実際にボランティアの面々もフルタイムで働く人・語学学校の学生・大学生など様々でした。

どんなシフトがある?

Big Topと呼ばれる大テントで行われるコンサートの監視員、劇場での誘導・チケットの確認、アンバサダーと呼ばれるガイド、ギャラリーの監視員・案内の他に、サイレントディスコに参加しながら参加者を確認するなど、仕事は多岐にわたります。ただ基本的にシフト申し込みは先着順であるため、コンサートなど人気のシフトに入るには先を見て動く必要があります。

私の経験した仕事

@ギャラリー

ギャラリーの案内の仕事は比較的のんびりしたものでした。私はEntanglementというビジュアルアートの会場でボランティアをしました。アートは、アイルランドに数多くあるデータセンター(AmazonやFacebookといった大企業のものも)を題材に扱ったものでした。鉄筋コンクリート剥き出しの地下室でサウンドも使った体験型の展示でした。見ただけでも、何かよくわからんがすごい圧だ、と思いました。そしてギャラリーのマネージャーから展示の趣旨などの説明を受けることができてからは、納得しながら面白がることができました。

アイルランドは平坦な地形と、厳しくない気候(冷涼な夏と厳しくない冬)、災害の少なさからデータセンターの場所に選ばれやすいそうです。アイルランド全体から鑑みても少なくない電力を消費しているらしい。
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基本的には入ってくる人に道順を教え、耳栓をお勧めする役割でした。時々道を聞く方、他のおすすめの場所などを聞かれることもありました。

@ストリート

屋外で行われる大規模なイベントは2つあり、そのうちの一つ、Les Girafesでボランティアをしました。フランスから訪れる曲芸人の一団が実寸大のキリンに扮して街を練り歩くというもの。動く舞台に乗ったオペラ歌手もいて、子供に大変人気のイベントでした。

ボランティアの仕事は観客がキリンに近づきすぎないように最前列で人を押しとどめるというもの。キリンの足に踏まれては大怪我をしてしまいかねないからです。移動しながらのショーであるため、人波もキリンも動く動く。小さい子供も多かったため、非常に神経を削られる仕事でもありました。一頭のキリンが途中でショーを中断するというトラブルもあり、舞台裏までそのキリンを誘導するという仕事もしました。演者さんたちからは最後まで演じられない悔しさややりきれなさをひしひしと感じました。それでも彼らは別の役としてショーに合流、最後まで笑顔で人々を楽しませていて、プロフェッショナルの矜持を垣間見ました。
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@劇場

劇場でのボランティアは私のお気に入りの一つです。芸術祭の期間中に11種類の舞台が並行して行われました。私はそのうちの5つでボランティアを、1つは観客として観劇しました。

舞台のボランティアのいいところは、やはり席に座って観られるチャンスがあることです。基本的にどの劇でも多少は空きがあり、ボランティアは空き席を融通してもらえたりします。仕事自体もチケットの確認や席への案内なので、そこまで厳しくないことが多いです。

見てきた劇の中でも私が特に気に入ったのはThe Tin Soldierという作品です。アンデルセンのブリキの兵隊が大筋に敷かれたミュージカルでした。卓越した舞踏や歌唱に加え、登場人物すべての声を一人が担当するという構成がユニーク。不思議な雰囲気を醸した舞台でした。
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https://www.giaf.ie/content/files/The_Tin_soldier_Programme_2022.pdf

@アンバサダー

アンバサダーは街の中心地で巡回し、パンフレットを手渡したり人を助ける役割です。私はこのシフトを多めに担っていました。人手が必要な役であることに加え、良い経験になりそうだと思ったからです。実際にこのシフトを通じて知り合った方とは交流が続いています。助けが必要な人を見極めることや、話しかけられた時にどう対応するかなど、コミュニケーションスキルが総じて向上したように感じます。自分はあまり社交的なタイプではないと思っていましたが、こういった対人の仕事もできることがわかったのは大きな収穫でした。

おまけ

ボランティア特典

ボランティアをすると、現地のレストランやカフェで割引をもらえたり、レンタルバイクを無料で使用できるなどの特典がありました。毎年特典は変わるそうですが、新たなお店を試す機会になって大変ありがたかったです。

Silent Disco

日本にいる間は聞いたことなかったタイプの娯楽でした。サイレントディスコとは、ディスコや屋外で参加者がヘッドフォンをつけてそこから音楽を聴きます。参加者は共通して音楽を聴いてダンスをしたり歌ったりと楽しむのですが、はたから見ると無音の中で騒いでいるため、サイレントディスコと呼ばれます。

この芸術祭では街中を練り歩くサイレントディスコが開催されていました。これに一般参加したのですが、ものすごく楽しかったです。色とりどりの街の中を、グループで踊る、歌う、歩く。通行人もノリに乗って参加したり離脱したり。刹那的な人とのセッションは、音楽のちからによって、他人を一瞬のうちに同好の士に変えてしまう面白さを持っていました。もしアイルランドにいらっしゃることがあれば、ぜひパブや街でのサイレントディスコに参加してみてください。
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そしてアイルランド、もしくはゴールウェイに滞在する機会がある人は、ぜひボランティアとしての参加を検討してみてください!現地の知り合いがたくさんできますし、素晴らしい経験になるはずです。